Webサービスで起業するにはメンバー全員がオールラウンドプレイヤーであることが必須かも

最近、Webサービスで起業した人、起業する人、起業したい人と色々お話することがある。その中で思ったこと。
Webサービスで起業しようと思ったら、少なくともスタートアップでジョインするメンバー全員に最低限の、少なくともサイト一個くらい自分だけの力で作れるようになるくらいの、プログラミングをはじめとする一通りのサービス構築スキルが必須になるのでは、ということだ。
もちろん、人それぞれ得意領域はある。営業が得意だったり、企画が得意だったり、デザインが得意だったり、経営や経理が得意だったり。それを活かせる場面はあるにはあるんだけど、Webサービスの場合、最初のうちの運営やマネタイズに直接関わるのはそういうスキルよりも、サービスを実際に構築できる力に依るところが大きい。
デザインだって、一旦作ってしまったらそんなに仕事なくなってしまうし、そもそも筋のいいサービスであれば、デザインやUIはしょぼくてもそこそこのトラフィックを集めることはできてしまいそうだ。HTMLやCSSはもちろん書けないとダメだけど、最初は必ずしもプロレベルまで上手い必要はなく、デザインしかできない人を恒常的にスタッフとして抱えると、例え腕がよくても結局スタート段階ではコストになってしまう。
営業力も、Webサービスを始めた段階では割と活かせる仕事がない。個人で始めるWebサービスやらCGMの場合、まずやるべき仕事はユーザーをいかに集めるかであって、ある程度ユーザーを集めてサービスが一定の信頼性と知名度を確保した段階で、はじめて営業の効果が出る。よほどのカリスマ営業じゃない限り、はじめたばかりのどこの馬の骨ともわからないWebサービスには誰もお金を払ってくれない。営業しかできないというのもやはりコストになる。最初のうちは作れる人に全面的に依存せざるを得ない。
CGMのようなWebサービスは、そんなにいきなりガンガン儲かって、みんなが食っていけるようなものではなく、逆に手っ取り早いマネタイズに逃げず、地道に辛抱して種を撒く時期というのがすごく重要になるので、作るのに最低限必要なミニマムなメンバーで構成するのがベストということになる。例えプロ級じゃなくても、全員が一通りの領域がわかり、実際に作れてしまうというような感じ。一人で作れるのなら一人でもいい。モチベーションを維持するのが大変そうだけど。
こういう企画がやりたい!あぁ、面白いねー、じゃあ誰が作る?という話になったときに、他人に「作ってくれ」と言わざるを得ない人はそれだけでスタートアップではコストになってしまうということなのだ。そういうのが積み重なって結局それが禍根を生み、失敗したベンチャーというのも多いそうだ。最初から目に見えた収入にならない場合は特に、いくら相手のことが人間として好きで全面的に信頼していても、なんで自分で作らないの?という感情は、自分自身で思っているよりもわだかまりとして溜まるものだと思う。また、自分で作ったのと自分で作っていないのと、コミットメントの度合いもまた変わるだろう。誰だって、自分で考えたものを作る方が楽しいし真剣にやる。
発想力というのも個人差はあると思うが、それこそ自分が思いついたものというのは、誰かしらが思いついているもので、アイデア自体に付加価値はあまりない。アイデアなんてのは曖昧なもので、結局作り方の細部にその思想が宿るので、実際のオペレーション次第で結果はどうにでもなってしまう。コンサルとかで食っていくのなら別だけど、結局実行力や実践力が伴わないとミニマムな世界では価値を生まない。もちろん根底にあるセンスは大事だと思うのだけれど、それだけではダメだと言うことだ。
どんな領域でも、どんな職種でも、プロ級のスキルをつけるのはそう甘いものではないだろう。経験も必要だし多くの時間を積まなければいけない。センスや才能も必要になる。
でも、Webサービスを一通り構築できるようになる、というのはそこまで難しいことなんだろうか、と思ったときに、私自身もプログラミングはまだできるとは到底言えないんだけど、何かのいっぱしの「プロ」になるほどの、ハードルの高いことではないような気がする。最近は便利なフレームワークもあるし。周囲にも、プロじゃないのにWebサービス作って成功した人達がいるので、余計そう思うのかもしれないけど。
「「個」として強く生きること」と「ウェブ・リテラシーを持つこと」の関係 - My Life Between Silicon Valley and Japan

ではウェブ・リテラシーって何?
たとえば、ネットの世界がどういう仕組みで動いているかの原理は相当詳しく徹底的に理解している。ウェブで何かを表現したいと思ったらすぐにそれができるくらいまでの能力を身につけている(ブログ・サービスを使って文を書くとかそういうことではなくて)、「ウェブ上の分身にカネを稼がせてみよう」みたいな話を聞けば、手をさっさと動かしてサイトを作って実験ができる(そこに新しい技術を入れ込んだり)。広告収入の正確な流れも含め「バーチャル経済圏」がどういう仕組みで動いているかの深い理解がある。新しい技術も、ネット上で独学できる程度までいけるベースとして、ITやウェブに対する理解とプログラミング能力を持つ。・・・・・・
多分このようなレベルのスキルは最低限必要だということなのだと思う。これは一般的に言われている「ITリテラシー」みたいなものとは少し違うけれど。
結局のところ、個々に得意な領域は持ちつつも、上記のような多少のプログラミングスキルを含めた「ウェブ・リテラシー」が、Webサービスで稼ごう思ったら最低限全員に必要になるのだろうと思う。「ウェブ・リテラシー」+α。
ちょうど、これは英語力とかにも似ていると思う。海外で活躍するためにそこそこ英語がしゃべれることが当たり前であるように、Webで何かをするために当たり前のものという感じか。プログラミングスキルをはじめとする「ウェブリテラシー」というのはWebで独立して何かをやるための、文字通り「言語」に当たるものなのかもしれない。
プロレベルにプログラミングスキルがある必要はないし、多くの人が使うようなフェーズになって初めて、プロを雇ってちゃんとしたサービスにしてもらえばよい。逆に、プロであることとそこに拘ってしまうことはスタートアップでは逆にマイナスに働いてしまうかもしれない。少ない行数で美しいコードを書くことよりも、多少ヘボくてもそこそこ使えて、かつ面白くて便利であることや、SEOを含め多くの人の目に触れられるようにチューニングできること、そしてアフィリエイトで稼げることの方が大事で、そしてスピードも重要になる。プロであることが活きるのは1から100にするような世界で、0から1の場合あまり要らないのかなぁという気がする。プロであるよりも、とりあえず中途半端でも一通り手を動かして自分でやれるオールラウンダーであることの方が、Webサービス起業においては重要なようだ。
少なくとも日本で成功してるWebサービスを見ると、もともと別の大きな収入源を持っていた企業を除いては、最初は1人〜2人のミニマムな構成で自分でガリガリ作っていた人達が多い。プロのプログラマじゃないけど、必要に応じてプログラムも書いていた、という感じの人が多いのも特徴だろう。
最初から、一般的な会社で言う「分業」のように、色んな属性のプロフェッショナルを揃えて、体制をガッチリ固めてしまうような考え方だと難しいようだ。この体制ならば受託開発ですぐに稼げるけれど、結果的に受託に奔走してしまい、最初の志に戻れなくなってしまうケースも多いようだ。最初にある程度資本を募り、それなりの人数で体制を整えるという考え方もあるけれど、それだとWebサービスのスタートアップの一番の武器である身軽さとスピードが失われてしまう危険性がある。実際作ることよりも意思決定に時間や労力が奪われてしまうようでは、膨大なリソースを持つ大企業がライバルになった時、到底勝てない。
なので、会社に属さず個人で好きなことをして身軽に生きていきたい場合や、また独立して受託ではなく1から作ったWebサービスで何か世の中に一石を投じたい場合、最低限のプログラミングスキルはやはり最大の助けになりそうだと思うのだ。「こういうの面白いと思うんだけど、誰か作ってよ。」じゃだめなんだと自戒を含めそう思う。
がんばらなければなぁ。

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