タレント議員について考えてみた。

普段からあまり政治に関心がなく、この間の都議選も夕方にようやく思い出しギリギリ投票を済ませた私ですが、最近ちょっと真剣に考えねばいけないのではないかなぁと思うニュースが多いので、少し政治について真面目に考えてみることにしました。
日曜日の都議選開票時に堀江貴文さん(@takapon_jp)のtwitterでつぶやいていた内容がとても興味深かったのでそれについて考えてみました。さすが、あれだけインパクトのある出馬を経験されているだけあって、一言一言説得力あるなぁ。

takapon_jpだから、若年層を選挙に呼び込むなら、若年層が喜ぶ、アツくなる、お祭りにすればいいの。
takapon_jp前回衆院選投票率全国平均67%。広島6区投票率が約80%
takapon_jpだから、工夫の仕方次第で注目を集められると思う。選挙運動も制約多いけどさ。
takapon_jpだから、若年層の利益代表政党をつくるしかないの。
takapon_jp世代間格差是正
takapon_jpだから、やっぱり芸能人に頼るしかないんだと思うんだよね。比例で議席とるしかない。小選挙区制は新規政党には厳しいよ。
takapon_jpそうそう。avexとか吉本とか総出で候補者立候補させてさ。
takapon_jp横山ノックや、そのまんま東が知事になっちゃうんだよ。そんなもんだよ。選挙って。
takapon_jp消去法で民主党に投票してる段階で既に衆愚政治でしょ。
takapon_jpいや、だから有名人・芸能人と有能な経営者とか専門家のセットの政党つくるのさ。
takapon_jp都議選だからって、有権者は別に衆院選を意識する必要なし。各候補者の政策を見て誰に投票するか決めればよい。別に消去法で民主党都議に投票することあない。
takapon_jp選挙面白いよ。参加すると分かる。爆笑の太田もやればいいのに。
takapon_jp裁判員制度みたいに、一度義務的に候補者の誰かの選挙をボランティアで手伝うことにしたら、投票率上がると思うよ。

問題は投票率の世代間格差。若年層は政治的弱者。

前回衆院選投票率全国平均67%。広島6区投票率が約80%。

80%…高っ!!そしてなんという説得力。…確かにあれは「祭り」だった。…というか、前回の衆議院選挙自体が「劇場型選挙」と言われるように、小泉元総理という役者を筆頭に大きな祭りのようなノリで周囲の若年層の関心も高かった記憶があります。
そこで年代別の衆議院選挙投票率の推移を見てみました。(『百年後の歴史小説』様より資料拝借)

確かに「お祭り」効果か。最後の前回衆院選は特に20代、30代の伸び率がスゴイ。しかし、それよりも年代別の投票率のものすごい差に改めて驚かされます。(特に平成8年以降の若年層の投票率低迷がスゴイな…。自分が選挙権得た辺りだ。)この投票率の世代間格差が、見事に世の中の「偉い人順」や「年収順」に比例してしまってるように思います。ここにも、「持てる者はますます富む」の構図が…。最後の衆院選でも、若年層の投票率は数字としては格段とのびている一方、世代間格差にはそれほど変動がないんですね。
ところで、祭りのような選挙といえばまずイメージしてしまうのが、アメリカ大統領選挙ですが、実はあれだけ盛り上がったように見える選挙でも調べてみたら投票率64.1%と意外と全体としては高くないんですね。日本の衆院選の方が勝ってる。
米大統領選の年代別投票率も知りたかったのですが、資料を見つけることができませんでした…スミマセン。。まぁそれほど論点に上げられないところを見る限り、そして老若男女盛り上がってる動画等を見る限り、多分世代間格差はそれほどないのかもしれません…(別の格差は大いにありそうですが)。

タレント議員、その適正と役割について考える。

芸能人とはいかなる存在か ー永井俊哉ドットコム

知識人たちは、経済や法についてほとんど何も知らない俳優やスポーツ選手などの芸能人が、選挙で当選する現象を衆愚政治として非難するが、経済や法に詳しいスペシャリストなら、ブレーンとして雇えばよいのであって、それよりもむしろ、大衆がトップの資質として問題にすることは、自分たちの統合を代表象するようなカリスマ性を持っているか否かということである

東国原さんの何がダメなのだろうか? - 評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」

東国原氏と共に、今回メディアの注目を集めている橋下大阪府知事は、東国原氏の一連の動きに対して肯定的だ。東国原氏のおかげで「国民が地方分権を考えるきっかけになった」と言う。
僕も東国原知事もテレビの申し子の政治家で、役割はひと言でいったら騒ぐこと。(具体的な)分権像を見せるのは知事会や市長会などプロのやること」と述べた(7月11日「朝日新聞」朝刊)。

東国原知事にしろ、橋下知事にしろ、その活躍が良くも悪くも目立つのは、ご本人達の政治的力量もさることながら、政治の最前線で活躍するために支払わなければならないコストが比較的少ないことも大きいのではと考えます。
会社で仕事をしていても、その企画を実行するためには、社内外に対するコンセンサスが必要で、下手をすると企画の立案・実行そのものよりもそのコンセンサスを得るために多大な時間的、労力的、金銭的コストを支払ったりします。いみじくも、それは「政治力」と呼ばれたりしますが、特に政治の世界では、この「政治力」に支払うコストがハンパない。例え選挙に当選したとしても、その後「政治力」をつけるまでに多大な年月を必要とするのが政治の世界です。そりゃ若年層の民意など、なかなか政治に反映されないわけで…それが目に見えてしまうからこそ、余計に足が遠のいて関心も薄れるという悪循環。
今回の都議選で、自分の選挙区の結果を単純に見てみても具体的な政策そのものよりも、実績や消去法的政党選びが重んじられている感じがします。となると、実績をつけ得ない若年層というのはそれだけで不利です。社会的な同意を得るにはそれなりの強い看板が必要です。実績や年月の世界で勝ち得ない若年層は、そこをチートする手段を戦略的に使わないと、大人の世界に単純に飛び込んで勝てるとは到底思えません。
その「看板」を得るための一つの手段として、フロントマンとしての「タレント議員」というのはなかなかどうして、非常に現実的な良いアイデアなのではないかと思います。

フロントマンとブレーンの役割分担、要は一つの「院政」なのかも。

いや、だから有名人・芸能人と有能な経営者とか専門家のセットの政党つくるのさ。

これが、一連のPOSTで一番グッときたのですが、そう、ブレーンは別の人でもいいんですよね。政界で政治力を持たないにしろ、優れたブレーンなら居るわけで、橋下弁護士も自らの役割を「騒ぐこと」だとおっしゃってますが、フロントマンとブレーンで分業しようという考え方ですね。社長が末端の業務の隅々に至るまで知っている必要は必ずしもないわけで、企画の一つ一つを社長自らが提案しなければいけない必要もないわけで、骨子はもちろん対外的に説明するためにも押さえておく必要があり、リーダーシップもとらなければいけませんが、この手の分業は普通の会社はどこでもやっている。政治家だって、オールラウンドなパーフェクト超人じゃなきゃいけない必要はないんじゃないかと思うのです。(逆に執政者個人にその手のパーフェクトさを求めすぎると、民主主義は損なわれてしまう気もします。)実際問題、政治家がその手の執政を実際にやっているかと言えば、実務を担っているのは官僚だったりするようですし、これは一つの現代版「院政」じゃないかと思うのです。

院政 - Wikipedia「現代日本における「院政」」

現代日本政治の「院政」は、名目上実権を持たない地位に就いて実質的な権力を行使することにより、権力行使に伴う法的・道義的責任を回避することを主目的とする意味で使われており、歴史上の院政とは本質的に異なる。

院政」というと、どうも巨悪の臭いがしますが、道具や手段は使い方によって人を幸せにもし、不幸にもします。今の政治を見ている限り、しょうもないスキャンダルで足の引っ張り合いが多いですが、「院政」はこの手のスキャンダルにもめっぽう強い。私は山岸凉子さんの「日出処の天子」という漫画がめちゃくちゃ好きなんですが、アレも聖徳太子推古天皇を立て、自らは摂政に回ることで、従来の豪族の権力を弱め、朝廷の執政権を強化したという話でした。既得権益と戦う場合に、「院政」は強力な一つの戦略なのではないかと思います。

爆笑の太田、の適正やいかに。

賛否両論あるようですが、個人的には結構いいんじゃないかなぁと思います…というか、それ以外に適任と思われる人、若年層では思いつかなかったよ。
ちょいと古いランキングですが…。
東国原知事に続け!? 20代女性に聞いた「日本の政界を担ってほしい芸能人」ランキング

 ●第1位/太田光……22.6%
 ○第2位/ビートたけし……17.2%
 ●第3位/所ジョージ……14.6%
 ○第4位/島田紳助……13.4%
 ●第5位/タモリ……9.4%
 ○第6位/関根勤……6.2%
 ●第7位/和田アキ子……4.8%
 ○第8位/明石家さんま……3.6%
 ●第9位/萩本欽一……3.2%

いや、選挙は一つの人気ランキングであると考えると、この手のランキングは馬鹿にできないと思います。少なくとも、上記の人が出馬すれば投票率が低い層も関心を持つということでしょう…。
この中で若年層…というと太田だけですね。しかも見事に一位。政治家っぽいイメージが結構既にある。関根勤もギリで若年層なのかな。あと、コメディアン率の高さにも注目したい。和田アキコ以外全員コメディアン!和田アキコだって必ずしもコメディ違うかと言えばちょっと微妙だし。
フロントマンとしてのタレント議員にとって大事な資質というのは、上のランキングからも鑑みて、以下のようなことなのではないかと思います。

  • 弁が立つこと。頭の回転の速さ。
  • 政治家として不自然じゃないイメージ
  • 「失言」もネタになる。

1番目の頭の回転の早さはフロントマンである限りかなり求められるのではないかと思います。ブレーンがいくら優れていても政策に沿った回答が即座に浮かばないとまずい。お笑いの人達は皆、頭の回転の速さが求められる最前線で日々勝負しているので、やはりその意味では適正が高いんだと思います。あと、政治家っぽいイメージからあんまりにもかけ離れてると看板として機能しなくなるのでこの辺も大事かと(後からついてくるのかもしれませんが)。
あともう一つの「失言」のネタ性については、総理大臣になる前の麻生さんが結構そんな感じでした。割とエンターテイメント性のある「失言」を繰り返し、特にネットユーザには支持が高かったと思います。「失言クオリティ」の高さがある種の「祭り」を引き起こし、結果的に支持を高めることができるとすれば、かなりその辺も太田さんは期待できるのではないかなぁと思います。これもいわゆる一つの「アド・フェニックス(不死鳥マーケティング)」ですかね。すみません…。いや、いいんじゃないかな…結構本気。。

だったらホリエモン出てよ。

と、私も正直思うのですが、あの人の偽悪的な極端キャラはもしかしたら政界には向かないかもしれません。事件の前ならまだしも、未だ係争中ですし、叩こうと思えば叩けるところもいっぱいあるわけで、と思ってたら案の定、こんなこともしてますし…。何より、頭が切れるし実行力も高く、いいビジョンも持ってますから、「院政」の「院」の方に徹した方が実はいい仕事されるんじゃないかなぁという気もします。いいシナリオ書きそう。

ブレーンの役割としてのインターネット

ウェブ進化論」的なオプティミズムの観点から言えば、その政治的「ブレーン」の役割はネットにも十分期待ができるのではないかと思います。実際、昨今のtwitter議員の急増や、楽天が開始する個人向け政治献金サービスなど、にわかに日本のネットが「残念」じゃない方向に動き出しているような気がしています。
都議選の日も多くのtwittererが個人の政治スタンスについて議論を交わしてましたし、それを見て自分の普段の関心のなさをとても反省したりして…。
次の衆院選までに、個人的にももっと真面目に考えねばなぁと思ったりしました。反省。


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